怪談牡丹燈籠(CAB)

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一 刀屋

本郷三丁目 藤村屋新兵衛という刀剣商の店先。
身なりも立派な若侍=飯島平太郎が、中間の藤助を伴い並べてある刀を吟味している。
気に入った刀があったので値の掛引きをしていると、後ろで通り掛かりの酔っ払い=黒川考蔵が藤助に因縁をつけている。
驚いた飯島平太郎は、黒川考蔵に詫びを入れたが、黒川考蔵は聞き入れないばかりか罵詈雑言を浴びせ、飯島平太郎の顔に痰を吐きかける。
冷静に対応していた飯島平太郎もこれには怒り、掛引き中の刀を抜くと黒川考蔵に切り付け、止めを刺してしまう。
慌てて詫びる藤助をなだめ、掛引き中だった刀を買い上げ、藤村屋から硯箱を借り自身番へ届を出し牛込の屋敷へ帰る。
帰宅後、父親の飯島平左衛門に話をし、平左衛門からお頭へ届を出したが黒川考蔵に非があるとされ、さしたるお咎めも無く事は済んだ。



二 お露と新三郎

刀屋の事件から数十年後、飯島平太郎は亡父の名を継ぎ飯島平左衛門となっている。
旗本から迎えた奥方との間に お露という娘もできた。
お露16歳の春、ふとした事が元になり奥方は亡くなってしまう。
奥方の付き人だった お国に手がつき、平左衛門の妾となったが奥方の居ない家の妾なので奥方同様の振舞いで次第に傲慢になっていく。
お国はお露が邪魔になり、二人の間に争いが絶えないので、平左衛門は柳島に別宅を買い お米という女中をつけてお露を別居させる。
年が明け、お露17歳の年。
根津清水谷に田畑貸家を持ちその収入で暮らしている浪人=萩原新三郎。
新三郎の家に飯島家に出入りしている幇間医者=山本志丈が尋ねて来て亀井戸の梅見に誘い出す。
梅見の帰り、志丈は新三郎を伴いお露の居る飯島の別宅へ立ち寄る。
初めて出会ったお露と新三郎は互いに惹かれ合い、別れ際にお露が言った、
「あなた、また来てくれなければ、私は死んでしまいますよ。」
の言葉が新三郎の耳に残り、片時も忘れる事が出来なくなった。



三 草履取の孝助

お国がやりたい放題になった飯島家に、孝助という若者が草履取として抱え入れられた。
ある日、良く気が利き一生懸命働く孝助に平左衛門が話し掛ける。
孝助は、「剣術を学ぶため武家奉公をしたかった。」と、打ち明ける。
「どうして剣術が学びたいのか?」と、平左衛門が尋ねると孝助は、
「18年前、本郷三丁目 藤村屋新兵衛という刀剣商の店先で斬られた父親の敵討ちをしたい。」
と、言うので平左衛門は胸にこたえたが孝助の考心に感じ入り、時期をみて自ら仇と名乗り孝助に討たれてやろうと決心し、孝助に剣術を指南する事を約束する。



四 香箱の蓋

新三郎の孫店に住む伴蔵夫婦は、家僕同様に新三郎の日常の世話をしていていた。
一方、お露に会いに行きたい新三郎は、志丈が顔を見せないため会いに行く事が出来ない。
食事もろくに摂らない新三郎を心配した伴蔵が様子を見に行くと、新三郎は「釣りに行こう。」と、伴蔵を誘う。
二人は横川に釣りに出掛けるが、新三郎に釣りをするつもりは無く、飯島の別宅を外からでも眺めたいのが本音。
舟に持ち込んだ酒を飲んで寝込んでしまった新三郎が起こされると、そこは飯島の別宅のそばだった。
舟を岸に着けて上陸し飯島の別宅の様子を伺っていると、お露も新三郎恋しさで思い詰めていたので、手を取って招き入れる。
やっと会えた二人は、もうこれまでと覚悟を決め枕を交わす。
お露は母の形見の香箱を持ち出し、「私の形見と思って預かって欲しい。」と、香箱の蓋を新三郎に渡す。
二人が語り合うところへ突然襖が開き、平左衛門が現れる。
平左衛門は二人を見て怒りだし、必死に言い訳する二人に斬りかかる。
お露の首が飛び、新三郎も頬から顎に掛けて斬られ倒れこんでしまう。
伴蔵の声で目を覚ました新三郎はすべてが夢であったと悟る。
「辻占が悪いから帰ろう。」と、舟を急がせ岸に上がろうとした時、
「旦那、こんな物は落ちております。」
と、伴蔵が差し出したのは夢でお露と取り交わした香箱の蓋だった。



五 お国と源次郎

平左衛門が泊まり番の夜。 暑くて寝付かれないでいた孝助が庭を歩いていると、締りをしたはずの戸がバタついている。
不信に思った孝助が座敷の様子を伺うと、お国が隣家の次男=源次郎を寝間に忍び入れ、邪魔者となった平左衛門を殺す算段をしている。
源次郎は平左衛門に可愛がられている上、剣術では平左衛門に遠く及ばないので、釣りに誘い出し泳ぎを知らない平左衛門を突き落とそうと言う計略。
源次郎が人の気配に気がつき、お国が表に声を掛けると孝助が返事をしたので「庭などを歩いていないで、しっかり門番をしろ。」と、叱る。
気の強い孝助は、「門番と言えど、庭の戸が開き何者かが入り込んでいるなら門ばかり見ているわけにはいかない。」と、譲らない。
お国は源次郎が来ているのを認めたが、「平左衛門の用事で来ているのだ。」と、言い張る。
それでも納得しない孝助に源次郎は平左衛門直筆の手紙を孝助に見せる。
手紙には、自分が留守の時でも構わないから、釣道具の手入れをして欲しい。」と、書かれていた。
源次郎は「お国との不義を疑うとはけしからん。お前のような奴は斬るには及ばぬ。」と、折れた弓で孝助を打ち据える。
孝助は、「向こうに証拠がある以上、暇を出されるに違いない。自分が居なくなれば旦那様は殺される。いっそのこと、お国と源次郎を槍で突き殺し、自分は腹を切ろう。」と、覚悟を決める。



六 牡丹燈籠

新三郎はひとりお露の事ばかり思い詰めていたある日、久しぶりに山本志丈が尋ねてくる。
志丈は、
「新三郎とお露の手引きをしたように思われるのが嫌で、顔を見せなかった。
 ところが、平左衛門様にお目に掛かったところ、『お露は新三郎恋しさで死んでしまい、お付きの女中お米も後を追うように死んでしまった。』と、聞かされた。」
と言う。
志丈の話に衝撃を受けた新三郎はますます体調を崩し、仏壇にお露の俗名を書いて念仏三昧の暮らしを始めた。
盆の十三日、新三郎が縁側で月を眺めていると、カラコン カラコンと駒下駄の音をさせ生垣の外を通る者がある。
ふと見ると、前を歩くのは三十くらいの年増で手には牡丹の柄の燈籠を持っている。
後ろから付いていくのは、振袖姿の十七八の娘。
月影越しに良く見ると娘はお露のようなので、新三郎が伸び上がって見ていると向こうも気がつき、声を掛けてきた。
話を聞くとお露のほうでも「新三郎は死んだ。」と、聞かされ、絶望したお露は尼になる事を決意したが、平左衛門に反対され家を追い出され、お米と二人で谷中の三崎で暮らしているという。
二人は再会を喜び、たとえ勘当されても手打ちにあっても一緒になろうと約束し、毎晩お露が通って来るようになった。
伴蔵は、毎晩女の話し声がするのを不審に思い、新三郎の家を覗いてみてビックリ、
「化物だっ、化物だっ!!」
と、叫びながら、新三郎を叔父のように世話している人相見の白翁堂勇斎のところへ駈け込む。



七 孝助の縁談

お国と源次郎の悪巧みを知った孝助は、二人を殺すまでは飯島家に留まり平左衛門を守ろうと心に決め「加減が悪い」と部屋に引きこもっていた。
翌朝、平左衛門が帰ったところに相川新五兵衛が尋ねてくる。
新五兵衛の話では、かねてから原因不明の病気で臥せっていた娘=おとくは孝助を見染めたための恋煩いである事が判ったと言う。
平左衛門からも孝助の忠義ぶりを聞いていた新五兵衛は、孝助をおとくの婿に迎えたいと申し入れる。
平左衛門は喜び、孝助を呼び出すと孝助の額には傷がついている。
孝助に問いただすが、「屋根から瓦が落ちて当たっただけ。」と、本当の事は聞き出せない。
傷の事は置いておいて、相川家への縁談を持ちかけるが孝助は受け入れようとしない。
渋る孝助をなんとか納得させ「明日、結納を交わすつもりだ。」と告げると、「殿様の身体が心配だ。」と、孝助は泣き出す。



八 海音如来




九 源次郎の計略 1




十 お札はがし 1




十一 源次郎の計略 2




十二 お札はがし 2




十三 平左衛門の死




十四 新三郎の死




十五 お国源次郎逐電




十六 伴蔵お峯逐電




十七 栗橋宿




十八 関口屋強請




十九 平左衛門一周忌




二十 孝助の母




二十一 上 孝助お国の因縁




二十一 下 孝助の敵討








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