洲崎の花魁に良いことを云われて、ぽーっとのぼせあがった若旦那。月に二・三 度しか家に帰らないなんてことになってしまう。その親父に頼まれた伯父さんが、 目を覚しにかかって、若旦那にこんな策を授けます。 「お前のおとっつぁんと、おれは相談したんだ。お前は遊び好きてえんじゃない。 女に惚れて、通ってるんだ。その女を身請しようじゃないか。その女が、シンから お前に惚れてるって云うんだったら、喜んで身請してやる。それをお前、試して みなよ。」 「試す……、ってぇますと?」 「うん。これから辰巳に行って、その女を茶屋に呼びだしな。そこでお前、泣くんだよ。 義理ある人のお金を五百両使い込んだんだけれど、それがあらわれた。どうしても あたしぁ死ななきゃならない。気の毒だと思ったら、折れた線香の一本でも手向けて おくんなさい。そう云って、それはお気の毒、あたしがなんとかいたしましょう ってんで奥に引っこんだら、諦めな。若旦那一人で死なせるのはお気の毒、あたしも 一緒に死にましょうと来たら、飛びこむすんでの所で手を取って、おれのところに 引っぱって来な。一緒にしてやるから。」 若旦那、云われたとおりに試してみる。すると花魁、海までついてきたが、 途中で心変りして、わざと遅れて着いてって、 「若旦那、あたしは足を痛めて、若旦那のところまでは行けません。あたしはここで 飛びこみます。お先にごめん下さいまし。南無阿弥陀仏。」 ってんで、石を投げこんでごまかしちゃう。恐くなった若旦那、若旦那も石を 投げこんでごまかして、その場から逃げだした。けれど、途中で花魁と鉢合せ……。
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