町内の金欠病の若い衆が集まって銭を出し合い暑気払いに一杯やろうということになった。 つまみを何にするか... 「たしか豆腐があった」というので、与太郎に何処にしまったか聞いてみると、 「ネズミに喰われるといけないから鍋に入れてフタをして戸棚にいれといた」。 さて、持ってきてみると夏の温気の最中フタをして戸棚にほっておいた豆腐は、ぽうっとカビが生えツーンとするにおいをを放っている。 このまま捨てるのもシャクにさわる、というので、こいつを誰かに喰わせてやろうということになる。 都合よく向こうから「伊勢屋の変物一件」、自称通人の伊勢屋のバカ旦那が... 「若旦那、こういうモンをもらったんですが、こいつは何でしょう?」 と、カマをかけてみると、バカ旦那、乗ってきた、乗ってきた。 知ったかぶりのあげく、ボゥッとカビが生えツーンとする匂いを放っている恐ろしいシロモノを、 「これは酢豆腐でげす。」 の一言のため食べさせられる羽目になるのだが...
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