殿様、武芸鍛錬ということで、目黒のほうへまいり、小高い山の赤松のほうへ徒歩で家臣たちと走ったあと、腹が減ったというときに、さんまのにおいが・・・。さんまを焼いていたのは近くの農家。そこにて、殿様、家臣ともども、さんまを召し上がります。 その後、殿様はご親類へお客様においでになり、お料理方が出てまいり 「えー、恐れながら、今日のお料理は何を召し上がりまするか」 「うむ、余はさんまであるぞ」 何かの間違いだということでもう一度うかがうと、やっぱりさんま。 早速日本橋の魚河岸でさんまをし入れ、さんまは油を抜き、小骨を抜き、吸い物となって出てきます 「何だ?これは、これがさんまか?」 「ははっ!御意にございます」 一箸お付けになります 「うむ?な、何だこれは・・・これ、このさんまはいずれよりし入れたのだ?」 「はっ、日本橋は魚河岸でございます」 「何だ、日本橋の魚河岸?いや、それではいかん、さんまは目黒に限る・・・」
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