ある旗本が手に入れた刀。旗本はこの刀で試し切りをしてみたくてしかたがない。ある夜、この刀を腰に差し試し切りをしようと思って出かけるが、いざとなるとためらってしまう。やがて屋敷近くの橋の上に乞食がねているのを見つけ、やにわに斬りつけると逃げるように屋敷に帰る。 屋敷にもどって刀を見ると、刃こぼれもしていないので大いに満足する。翌日友人が訪ねて来る。この話を聞いた友人は「是非に」と言って、この刀を借り受け、自分も試し切りに出かける。やがて、昨日旗本が乞食に斬りつけたという橋にさしかかると、またしても乞食がこもをかぶって寝ている。男は、この乞食に斬りつける。 すると乞食がむっくり起きあがって叫ぶ。 「だれでぇ、毎晩毎晩、俺をぶん殴るのは?」
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